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食事摂取基準は5年ごとに改定されていることから、改訂された内容について問う問題が出題されている傾向があります。
推定平均必要量や推奨量、目安量、各栄養素の策定根拠などのキーワードを自分の言葉で説明できるようにしておくと良いでしょう。
< 内 容 >
・例年の出題数
・食事摂取基準策定について
・食事摂取基準の対象者について
・エネルギーや栄養素の指標について
・それぞれの指標について
・集団の食事摂取状況の調査について
・推定平均必要量の算定根拠について
過去5年間の「食事摂取基準」に関連した問題の出題数は以下の通りです。
2.食事摂取基準(2015)の策定
食事摂取基準は健康増進法に基づき、厚生労働省が5年ごとに策定している。
2015年改訂の食事摂取基準では、健康の保持・増進や生活習慣病の発症予防に加えて、『生活習慣病の重症化予防』も視野に入れて策定された。
また、それにともなってそれぞれの疾病のガイドラインとの調和が図られている。(糖尿病ガイドラインやCOPDのガイドラインなど。)
3.食事摂取基準の対象者
健康な個人並びに健康な人を中心として構成されている集団とし、高血圧、脂質異常、高血糖、腎機能低下に関するリスクを有していても自立した日常生活を営んでいる者を含む。
治療を目的とするものに関しては、食事摂取基準の基本的な考え方の理解はもとに、それぞれの治療ガイドライン等を用いることとする。
☆2010年までにおける食事摂取基準では、健康な個人または集団を対象としていたが、2015年ではリスクを有する者も対象者としている。
4.エネルギーの指標
エネルギ―の過不足はエネルギー摂取量と相関が高い体重変化量またはBMIで評価される。
また、エネルギーの過不足とは別に、栄養素の過不足を回避するための指標として3つの目的とそれに対する5つの指標がある。
5.3つ目的と指標、研究方法について
① 摂取不足の評価
⇒評価指標として個人の評価には推定平均必要量、推奨量、目安量が用いられる。また、集団の栄養素摂取不足の評価においては、推定平均必要量と目安量が用いられる。(推定平均必要量や、推奨量が無い場合は目安量を用いる。)
⇒算定根拠となる研究方法…実験研究、疫学研究
② 過剰摂取による健康障害の評価⇒評価指標として耐容上限量が用いられる。
⇒算定根拠となる研究方法…症例報告
③ 生活習慣病の予防⇒評価指標として目標量が用いられる。
⇒算定根拠となる研究方法…介入研究
6.集団の食事摂取状況の調査
集団の食事摂取状況の評価においては、それぞれの摂取量の平均値を求めるのではなく、栄養素の摂取量が指標を下回っている場合や上回っている場合の割合や分布をもとに評価することに注意する。評価の際に平均値を用いないのは、摂取量の多いものや少ないものを評価することができないためである。
*集団における評価項目と指標
① エネルギー摂取不足⇒目標となるBMIを下回っている者や上回っているものの割合。
② 栄養素の摂取不足⇒推定平均必要量の下回る者の割合を調査する。
③ 栄養素の過剰摂取⇒耐用上限量を上回る者の割合を調査する。
④ 生活習慣病予防を目的⇒目標量の範囲を逸脱する者の割合を調査する。
7.それぞれの指標について
画像:http://www.glico.co.jp/navi/e06.htmlより
① 推定平均必要量(EAR)とは
『ある集団に属する50%の人が必要量を満たすと推定される摂取量。』(50%の人が必要量を満たさない量ともいえる。)科学的根拠がある指標である。
健康障害が生じるまでの典型的な摂取期間は数か月間である。
② 推奨量(RDA)とは
『ある集団において、ほとんどの人(97~98%)が充足しているとされる摂取量。』
健康障害が生じるまでの典型的な摂取期間は数か月間である。
推奨量では不足している可能性が2~3%と低く、栄養指導には推奨量を用いると良い。
※推奨量=推定平均必要量×推奨量算定係数
③ 目安量(AI)とは
推定平均必要量が算定できない場合に用いられる。『特定集団において不足状態を示す人がほとんどおらず、一定の栄養状態を維持するのに十分な量』である。十分な科学的根拠はない。
健康障害が生じるまでの典型的な摂取期間は数か月間である。
母乳保育の健康な乳児の摂取量では、母乳中の栄養素濃度と哺乳量との積を用いて計算する。
⑤ 耐用上限量(UL)とは
『習慣的に摂取する量として健康障害をもたらすリスクが無いとみなされる量の上限。』過剰摂取による健康障害を未然に防ぐことを目的として算定された。
耐用上限量以上を習慣的に摂取していると健康障害のリスクが高まるとされている。
健康障害が生じるまでの典型的な摂取期間は数か月間である。
* 目標量(DG)とは
『生活習慣病の発症および重症化予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき量。』
目標論はその他の指標と違い、確率論で示すことができないため、表には示されていない。
健康障害が生じるまでの典型的な摂取期間は数年~数十年間である。
8.推定平均必要量の設定根拠について*2
ビタミンC
壊血病の回避ではなく、心臓血管系の疾病予防効果並びに抗酸化作用効果から算定された。
ビタミンB1
ビタミン B1の欠乏症である脚気を予防するための最小必要量からではなく、尿中にビタミン B1 の排泄量が増大し始める摂取量(体内飽和量)から算定された。
ビタミンB2
ビタミン B2の欠乏症である口唇炎、口角炎、舌炎などの皮膚炎を予防するための最小摂取量から求めた値ではなく、尿中にビタミン B2 の排泄量が増大し始める摂取量から算定された。
ナイアシン
ペラグラを予防できる最小摂取量から算定された。
<確認問題>
※上記にも示した通り、食事摂取基準は5年ごとに改定されており、内容が少しずつ変わってきています。
何年も前の過去問題では、食事摂取基準の内容の違いによって勘違いをしてしまう可能性もありますので、過去の食事摂取基準の問題を解く際には、改訂の年度や前年との変更内容をよく確認するようにしましょう。
<基礎問題>
30-86 日本人の食事摂取基準(2015年版)の策定に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)対象者には、高血圧や高血糖のリスクのある者は含まない。
(2)成人のエネルギーの指標には、BMI (kg/m2)を用いる。
(3)食物繊維の目標量(DG)は、1歳以上の全ての年齢区分で設定された。
(4)生活習慣病の重症化予防は、策定方針に含まれている。
(5)成人男子のナトリウム(食塩相当量)の目標量(DG)は、9.0g/日未満である。
30-87 日本人の食事摂取基準(2015年版)における水溶性ビタミンの推定平均必要量(EAR)の設定根拠に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)ビタミンB1は、脚気を予防できる最小摂取量から算定された。
(2)ビタミンB2は、尿中ビタミンB2排泄量が増大し始める摂取量から算定された。
(3)ナイアシンは、ペラグラを予防できる最小摂取量から算定された。
(4)ビタミンB12は、尿中ビタミンB12排泄量が増大し始める摂取量から算定された。
(5〉ビタミンCは、壊血病を予防できる最小摂取量から算定された。
30-88 日本人の食事摂取基準(2015年版)におけるエネルギー産生栄養素バランスに関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)エネルギー産生栄養素バランスは、目安量(AI)として設定された。
(2)炭水化物のエネルギーには、アルコールを含む。
(3)たんぱく質の下限は、推奨量(RDA)以上であると設定された。
(4)脂質の上限は、飽和脂肪酸の目標量(DG)を考慮して設定された。
(5)活用時には、基準とした値の幅を柔軟に用いる。
30-89 日本人の食事摂取基準(2015年版)の科学的根拠に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)系統的レビューの方法を用いた。
(2)各々の栄養素のエビデンスレベルは、異なる。
(3)目安量(AI)の算定根拠は、症例報告が多い。
(4)耐容上限量(UL)の算定根拠は介入研究が多い。
(5)目標量(DG)の算定根拠となる研究の典型的な観察期間は、数か月である。
<発展・応用問題>
30-92 日本人の食事摂取基準(2015年版)において、妊婦に付加量が設定されている栄養素である。正しいのはどれか。2つ選べ。
(1)ビタミンA
(2)ナイアシン
(3)ビタミンC
(4)ナトリウム
(5)カルシウム
30-146 健康増進法に規定されている施策の実施者に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)内閣総理大臣は、国民の健康増進の総合的推進のための基本指針を定める。
(2)厚生労働大臣は、特別用途表示の許可をする。
(3)厚生労働大臣は、医師又は管理栄養士の資格を有する者から栄養指導員を命ずる。
(4)都道府県知事は、食事摂取基準の策定を行う。
(5)都道府県知事は、特定給食施設に対し栄養管理の実施に必要な指導をする。
30-154 地域集団を対象として、習慣的な食事摂取量の調査を行った。「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を用いた評価として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1)エネルギーについて、推定エネルギー必要量に対する摂取エネルギー量の比率を算出した。
(2)たんぱく質にして、推定平均必要量(EAR)未満の者の割合を算出した。
(3)脂質について、目標量(DG)の範囲を逸脱する者の割合を算出した。
(4)ナトリウムについて、目標量(DG)を超える者の割合を算出した。
(5)ビタミンAについて、耐容上限量(UL)を超える者の割合を算出した。
参考資料
*1:厚生労働省「食事摂取基準と健康な食事(芳賀)」2014.(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000053419.pdf)2016年6月24日アクセス.
*2:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要」(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf)2016年6月24日アクセス.
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