(1)呼吸商 (RQ)低下時は、糖質の不足を示すため、制限する必要はない。
(2)フィッシャー比低下時は、分岐鎖アミノ酸を投与する。
(3)高アンモニア血症では、タンパク質を制限する。
(4)腹水時には、塩分と水分の制限を行う。
〇(5)便秘予防には、ラクツロースを投与する。
肝硬変とは?
肝障害の終末的状態。肝臓は線維化によって硬くなり、肝機能不全をきたす。原因としては、肝炎ウイルスによる慢性肝炎からの移行が8~9割、アルコール性や非アルコール性脂肪肝によるものが1割である。
症状や進行の程度によって代償期と非代償期にわけられ、栄養管理も異なる。
(1)肝硬変代償期
自覚症状がない場合が多い。
バランスの良い食事と、禁酒を行う。
(2)肝硬変非代償期
特徴的な症状として、黄疸や腹水、浮腫、出血傾向などがみられる。また、さらに進行した末期の状態では、肝性脳症や羽ばたき振戦がみられる。
症状とその原因
原因を知って、栄養管理の原理を理解しよう。
(1)黄疸
血中のビリルビン濃度の上昇による。ビリルビンは血液中の赤血球が代謝されることによって産生される物質である。
ビリルビンは様々な経路を通って再び赤血球に合成されるが、肝臓の機能が低下すると赤血球への再合成の経路が絶たれ、血液中にビリルビンが増えてきてしまう。
黄疸は全身に出る症状であるが、特に人の白眼の部分や顔全体で確認しやすい。
(2)呼吸商の低下
呼吸商の低下は、体内における脂質の燃焼が多いことを示す。肝硬変では、肝臓でのグリコーゲン貯蔵能が低下し、空腹時の脂肪や体たんぱく質の分解が亢進する。これが繰り返されるとエネルギー不足により、栄養状態は悪化する。
よって、呼吸商が低下した場合には糖質を投与し、栄養状態の改善を図る必要がある。
※呼吸商とは、CO2排泄量とO2消費量の比である。呼吸商を知ることによって、糖質と脂質の代謝状態を知ることができ、栄養状態の評価に用いることができる。体内における脂質の酸化が多いほど数値は0.7に近づき、糖質が多いほど1.0に近づく。
(3)出血傾向
肝硬変では、肝臓の線維化などによる肝機能の低下によって血小板の産生が減少する。このように、止血のために必要な血小板の数が減少することで、止血されにくくなり出血傾向となる。
(4)肝性脳症
血中アンモニアの上昇によって、肝性脳症を引き起こすといわれている。(肝機能の低下によって処理しきれなくなったアンモニアが、新しく形成されたシャントによって体循環にアンモニアが侵入し脳に達する。)
悪化すると昏睡状態となる。