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1.食事調査方法の種類
2.それぞれの方法の特徴(メリットデメリット)
1.食事調査方法の種類
食事調査法には、食事の際に記録のする方法と、過去の食事について思い出すなどして情報を収集する方法がある。また、過去の情報によるものでは、実際に食べたものを一つずつ思い出す24時間思い出し法や、習慣的な食事の摂取について調べる食事歴法に分けられる。
このように食事調査の方法は調査法や目的によって、食事記録法、陰膳法、24時間思い出し法、食物摂取頻度法、食事歴法などに分けられる。
① 食事記録法…食事をすべて記録する方法
② 陰膳法…実際に食べた料理や食物を分析する方法
③ 24時間思い出し法…前日の食事を申告する方法
④ 食物摂取頻度調査法…習慣的な摂取頻度を申告する方法
⑤ 食事歴法…過去の食事歴を申告する方法
中でも①食事記録法、②陰膳法は実際に食べた食事(事実)に基づく記録であるのに対して、③24時間思い出し法や④食事摂取頻度調査法、⑤食事歴法は対象者の記憶に頼る方法である。
2.それぞれの特徴(メリットデメリット)
<食事記録法>
記録表の記入方式には、自由記入式と、固定記入式があり、自由記入式では食品の種類や摂取量を被験者が自由に記入することができる。対して、固定記入式では、食品名や食品群が決められており所定の箇所に情報を記入する。食事記録法において、自由記入式が用いられることが多い。
<メリット>
・現行の食事調査の中でも、真の値に近い調査ができる。
・数日間に及ぶ調査によって個人を群分けしたり、個人内変動や個人間変動に関する情報を得ることができる。
・自由記入式では摂取頻度の低い食品の把握もできる。
・数日間の調査でも、定期的に行うことで食習慣を把握することもできる。
・対象者の記憶能力をあまり必要としない。
<デメリット>
・被験者の負担が大きい。
(食事記録法における調査ではおおいに対象者からの協力を必要とする。そのため、協力度の高い対象者では、元々健康や食事に関しての関心が高いことがあり、回答者バイアスが生じることがある。)
・食事変容バイアスが生じる。
(特に肥満者においては、食事記録が要因となって過少申告などをしやすい。)
・栄養計算の作業に手間や経費がかかる。
・調味料に関する記録は困難である。
実際に被験者が摂取した食事と同じものをもう一つ作り、科学的な分析をしたうえで摂取栄養素量を推定する。
<メリット>
・食品成分表の有する誤差が解消される。
・他の食事法と比較する際のゴールドスタンダートとなる。
・食品成分表に記載されていない食品も評価することができる。
<デメリット>
・多くの経費や手間がかかる。
・大人数の調査にはあまり向かない。(何千人、何万人~など)
前日の食事を思い出し、栄養摂取量を推定する方法。面接による調査がほとんどである。
24時間思い出し法は『食事思い出し法』の中で最も一般的な方法である。
集団の平均摂取量を調査する際には、季節や曜日による変動を考慮する。
<メリット>
・集団の平均摂取量を把握することができる。
・数日間の調査によって、個人の食習慣を知ることもできる。(まれにしか食べない食事なども)
<デメリット>
・7歳以下の小児や75歳以上の高齢者には向かないことが多い。
(被験者の短期間の記憶能力に依存する調査であるため。)
・他の調査法よりも過少申告しやすい。
・摂取量を正確に把握することは難しい。
・聞き取る側の技量が必要である。
主要な食品や料理に関する習慣的な摂取頻度や状容量を択一式で回答させ、栄養摂取量を推定する方法。質的評価と判定量評価に分けられる。質問票を用いるのが一般的であり、食物摂取頻度質問票(FFQ)と呼ばれる。面接式、自記式どちらでも調査可能である。
摂取量の正確さを増すために用いられるものとして、半定量式食物摂取頻度法があり、標準的な一回の摂取量を質問票に示し、それに対して被験者が食べた量を相対的に答える。
<メリット>
・コーディングが簡便である。
(調査を機械的に行うこともでき、それに対してあまり費用はかからない。)
・長期間の食事摂取状況を把握できる。
・多人数の評価が可能で回答率も高い。
・栄養士を必要としない。
・疫学研究に用いりやすい。
<デメリット>
・栄養素の摂取量を精密に把握することはできない。
・日間変動に関する情報が得られない。
様々な期間における個人の日常的な食品摂取や食事パターンを調査する方法。期間は1か月、または半年間、一年間とされることが多い。
<メリット>
・日常的な食品摂取や食事のパターンを調査することができる。
・集団の平均や分布を調べることができる。
・栄養素の摂取量によって対象者を分類することができる。
<デメリット>
・訓練された栄養士でないと面接を行うことは難しい。
・日間変動の大きい食習慣の被験者には適さない。
・過大評価になりやすい。
・記憶力が必要である。
* 秤量法:実際に秤で測る方法。
* 非秤量法:概量を目安量としてそれに充てる方法。
* 個人内変動:個人内における変動
* 個人間変動:個人によって異なること
第27回~第30回国試より
30-153 集団のアセスメントを目的とした食事調査における誤差要因と、その対策の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)対象者の思い出し能力 ――― 調査日数を増やす
(2)対象者の過小申告 ――――― 24時間思い出し法を用いる
(3)食品成分表の精度 ――――― 秤量法を用いる
(4)個人内変動 ―――――――― 食物摂取頻度調査法を用いる
(5)季節変動 ――――――――― 対象の人数を増やす
29-161 地域において1,000人の成人女性を対象に、食事と乳がんとの関係を明らかにするための栄養疫学研究を計画したい。1回の食事調査結果から個人の習慣的な食物摂取状況を把握する方法である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)食事記録法(秤量法)
(2)食事記録法(目安量法)
(3)24時間食事思い出し法
(4)食物摂取頻度調査法
(5)陰膳法
28-162 食事調査法に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) 秤量記録法では、世帯単位の調査はできない。
(2) 秤量記録法では、習慣的な食事内容の変更が生じにくい。
(3) 24時間思い出し法では、面接者間の面接手順を統一させる。
(4) 24時間思い出し法では、食物摂取頻度調査法と比べ調査者の負担が小さい。
(5) 食物摂取頻度調査法では、国際的に統一された食品リストを用いる。
27-161食事調査法に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ。
(1) 24時間食事思い出し法では、習慣的な食事内容の変更が生じやすい。
(2) 秤量法は、他の調査結果の精度を評価する基準とされる。
(3) 目安量法では、目安量と食品重量の標準化が必要である。
(4) 食物摂取頻度調査法は、集団内での摂取量のランク付けができる。
(5) 陰膳法では、日本食品標準成分表に収載されていない食品を評価できる。
27-162食事調査における、栄養素摂取量のエネルギー調整に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1) 過小申告の程度を判断するのに有効である。
(2) 総エネルギー摂取量の影響を考慮した評価法である。
(3) PFCバランスは、残差法によるエネルギー調整値である。
(4) 密度法によるエネルギー調整値は、観察集団のエネルギー摂取量の平均値によって異なる。
(5) 密度法によるエネルギー調整値は、観察集団の栄養素摂取量の平均値から算出する。
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