⑴ 1か月で 10 kg の減量を目標とする。
一般的に高度肥満症の減量は、「現体重の5〜10%の減量」を目安に行います。
現体重が80kgなので「現体重から4〜8kgを目安に減量する」ことになります。
したがって選択肢の1ヶ月で10kgの減量は厳しすぎる選択肢となります。
ちなみに肥満症(BMI25以上35未満)の場合は「3〜6ヶ月の間に現体重の3%の減量ペース」となります。
⑵ 除脂肪体重を減らす。
「除脂肪体重」とは「筋肉」や「骨」、「内臓」の重量のことを指します。
したがって、「除脂肪体重を減らす」=「筋肉や骨を減らす」となり、
フレイルやサルコペニアを誘発する恐れがあるため実施しません。
可能な限り「脂肪」を減らす必要があります。
⑶ エネルギー摂取量は、15 kcal/kg 目標体重/日とする。
高度肥満症の場合、エネルギー摂取量は20〜25kcal/kg目標体重/日で設定します。
この患者は目標体重(BMI22の体重)が49.5kg(約50kg)なので
指示エネルギーは「1000〜1250kcal/日」となります。
このエネルギー摂取量の設定でうまく減量が進まないときに、
1日あたり600kcal程度の「超低エネルギー食(VLCD)」を利用する場合もありますが
問題文にわざわざ「初診」と書いてあるため、まずは20~25kcal/kg目標体重/日を用います。
⑷ たんぱく質摂取量は、0.8 g/kg目標体重/日とする。
たんぱく質は1.0g/kg目標体重/日で設定します。
肥満症や高度肥満症ではエネルギー摂取量を減らしますが、たんぱく質を制限すると
フレイルやサルコペニアを誘発する恐れがあり、選択肢として不適となります。
また、たんぱく質を1.0g/kg目標体重/日で考えると、1日あたり50gのたんぱく質(=200kcal)摂取となり
これは、P比:16〜20%Eとなり、P比の基準:13%E〜20%Eの間に収まるため適していると考えられます。
※P比は(3)で求めた「指示エネルギー1000~1250kcal」と「たんぱく質50g分のエネルギー200kcal」を元に算出
〇⑸ 脂肪エネルギー比率は、25%E とする。
PFC比のF比の基準は「指示エネルギーの20〜30%E」なので適しています。
[1] 日本肥満学会 肥満症診療ガイドライン http://www.jasso.or.jp/contents/magazine/journal.html (2024年10月22日閲覧)
余談ですが、(3)などは
一般人30~35kcal, 肥満症25~30kcal, 高度肥満症20~25kcal。それ以下の場合はVLCD(600kcal/日)などになるため
選択肢の15kcal〜〜はそもそもありえない数値です。
国試では25kcalを提示して、「正解のような不正解のような・・・」というどっちつかずの選択肢が出ることはなく、
今回の15kcalや37-123のように食塩8gなど極端に多かったり少なかったりする選択肢が頻出します。
おおよその数値を覚えておくだけでも対策できる選択肢もあるのでその辺りも意識しておきましょう。
文責:アヒル