38-198, 199, 200 K事業所の社員食堂を運営している給食受託会社の管理栄養士である。K 事業所の男性社員はデスクワークが 1 日の大半を占めており、他の事業所より、特に肥満( 1 度:BMI 25 以上 30 kg/m2 未満)の者の割合が高い。

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38-198, 199, 200 次の文を読み「198」、「199」、「200に答えよ

K事業所の社員食堂を運営している給食受託会社の管理栄養士である。K 事業所の男性社員はデスクワークが 1 日の大半を占めており、他の事業所より、特に肥満( 1 度:BMI 25 以上 30 kg/m2 未満)の者の割合が高い。これまで社員を対象に様々な栄養情報を提供してきたが、男性社員の健康への関心は薄い。そこで、食環境整備を行うこととした。初めに、K 事業所の 2060 歳台男性社員の利用率が高い社員食堂において、男性社員(1,100 人)のメニューの選択状況を、売上食数から把握した(表)。

 

38-198 表の調査結果から読み取れる、優先して取り組むべき問題である。最も適切なのはどれか。 1つ選べ。
⑴ 食塩の摂取量が多い。
⑵ 脂質の摂取量が多い。
⑶ 炭水化物の摂取量が多い。
⑷ たんぱく質の摂取量が多い。

38-199
課題解決に向けて、社員食堂において定食の選択を増やすための取組を行うこととした。ナッジを用いた取組内容として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。
⑴ 定食のプライスカードに、目立つようにエネルギー量を表示する。
⑵ 定食を即出しランチと名付け、待ち時間を短縮した優先レーンで提供する。
⑶ 定食をヘルシーランチと名付け、副菜小鉢を 2つとも野菜料理にする。
⑷ 定食の選択者には、ご飯大盛りを無料とする。

38-200
この取組を約 6か月間継続したところ、定食の食数は着実に増加してきた。そこで、健康管理部門と連携して、会社の健康課題である肥満解消に向けた効果を調べることにした。職員健診の場を利用して、全男性社員を対象に、取組前後における食堂の利用状況に関するアンケート調査を行った。以前は定食をほとんど利用していなかった者に限定して、データ分析を行った。最も適切なのはどれか。1つ選べ。
   新たに定食を利用するようになった者における、メニュー選択の変更に伴う摂取エネルギーの変化量を算出する。
   BMIの低下が特に大きかった 10 名の調査票を抽出して、メニューの選択状況を詳細に調べる。
   定食の利用頻度で 2 群に分け、取組前の健診時からの体重の変化量を比較する。
   取組前の健診時の肥満の有無で層別化して、定食の利用頻度で2群に分け、BMIの分布の変化を比較する。

厚生労働省. 『第38回管理栄養士国家試験の問題(午後の部)』(2024) .

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001218344.pdf, (2025年2月13日閲覧)

解答・解説を見る

 

38-198 まずはじめに、表から人気メニューを読み取る必要がある。

人気メニューの1位はラーメンとミニカツ丼であり、

2位カレーライス(大盛り)、3位は和麺、4位カツ丼(大盛り)と続く。

このことから考えられるのは摂取している炭水化物が多すぎることと、

おそらく食塩量が多くなっていることである。

※また、ご飯の大盛りが強調されていたり、麺類と丼物ばかり記載されていること
麺類の汁を飲む飲まないが書かれていないことから食塩の過剰よりも
炭水化物に着目して欲しい問題であると裏読みすることができる。

 

⑴ 食塩の摂取量が多い。

前述の理由より、食塩の過多も考えられるが炭水化物の摂取量の方が過剰なため最も適切とはならない

⑵ 脂質の摂取量が多い。

和麺などは脂質量が少ない。そのため脂質摂取量は優先的に取り組むべき問題にはならない

 

⑶ 炭水化物の摂取量が多い。

正しい選択肢である。

前述の通り、麺類や丼物、更には大盛りなど炭水化物の摂取量が著しく多いため

優先して取り組むべき問題となる。

 

⑷ たんぱく質の摂取量が多い。

カレーライスや和麺などはたんぱく質の量が比較的少ないと考えられるため優先的に取り組むべき問題にはならない

 

 

38-199 ナッジを用いた取り組みを考える問題である。

ナッジとは対象者に、本人の意思(無意識を含む)で自然と望ましい行動を促すための仕組みを指す。

38-105などでも出題されている通り、ナッジの枠組みEASTを満たしているかを考えると捉えやすいかもしれない。

この問題では定食の選択を増やすためのナッジを用いた取り組みを考えることを念頭に置いて選択肢を精査する。

 

⑴ 定食のプライスカードに、目立つようにエネルギー量を表示する。

定食のプライスカードにエネルギー量を記載しただけでは、他の麺類や丼物との比較ができないため

過剰なエネルギー摂取量を控えるために定食にしようという行動には繋がらないため不適である

 

⑵ 定食を即出しランチと名付け、待ち時間を短縮した優先レーンで提供する。

正しい選択肢である。 即出し→時短による商品への魅力(Attractive) 優先レーンの利用→並ぶだけで簡単(Easy)を満たし

自然と、定食を選択させるためナッジを用いた取り組みに該当する。

 

⑶ 定食をヘルシーランチと名付け、副菜小鉢を 2つとも野菜料理にする。

名称の変更だけでは定食を優先して選ぶ利用者は増えない。EASTにも当てはまらないため不適である

 

⑷ 定食の選択者には、ご飯大盛りを無料とする。

ご飯大盛り無料によって定食を選択する利用者が増えることは想像できるが、

炭水化物摂取量の過多を回避するために定食利用を進めたいにも関わらず、

ご飯を大盛り無料にするのは本末転倒であるゆえに不適となる。

 

38-200 このK事業所での課題は肥満者が多いことで、定食普及活動という取り組みを実施し、

6ヶ月経過後の肥満解消効果を検証している。

対象者は“以前は定食をほとんど選んでいなかったもの”に限定して分析している。

当然ながら評価項目は、社員のBMI分布(BMI25以上の者の減少)など、集団の肥満是正が見られるものが設定される。
※日本人の食事摂取基準にも同じ旨の記載があるが、集団の食事摂取の状況を分析するときは集団の分布で把握するようにされている。

 

新たに定食を利用するようになった者における、メニュー選択の変更に伴う摂取エネルギーの変化量を算出する。

新たに定食を利用するようになった者の摂取エネルギー量の変化を見ているのみで、

定食普及の取り組みによる、社員のBMI分布などまでは見ていないため不適である。

 

BMIの低下が特に大きかった 10 名の調査票を抽出して、メニューの選択状況を詳細に調べる。

メニューの選択状況を聞いているのみで、定食普及の取り組みによる肥満の解消効果をはかる内容となっていないため不適である。※BMIの分布は見ていない。

 

定食の利用頻度で 2 群に分け、取組前の健診時からの体重の変化量を比較する。

(1)と同様に摂取エネルギー量の変化は見ることができるが、BMI分布の変化までは見れていないので不適である。

 

取組前の健診時の肥満の有無で層別化して、定食の利用頻度で2群に分け、BMIの分布の変化を比較する。

正しい選択肢である。BMI分布の変化を見るために、まず肥満者と非肥満者で分け、定食の利用頻度でさらに2群に分ける。

こうすることで、「肥満者で定食をよく利用した者」VS「肥満者で定食をあまり利用しなかったもの」の比較を作ることができ

定食を選ぶことが肥満者の減少につながった(つながらなかった)
定食普及の取り組みが社員の肥満者減少に向けた効果があった(効果がなかった)ことを示すことができる。

 

研究デザインの問題は多少難しいが、

集団の摂取評価を「分布で見る」という部分は

公衆栄養でも出題されうるので把握しておいた方が良い。

 

 

文責:アヒル


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