38-193, 194, 195 K 社健康保険組合の管理栄養士である。K 社では男性の高血圧症の者の割合が高い。その原因の一つに食塩の過剰摂取が考えられた。そこで、男性社員の食塩摂取量の減少を目的として、利用率の高い社員食堂において、減塩メニューの充実による食環境整備と減塩教育を行うことになった。

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38-193, 194, 195 次の文を読み「193」、「194」、「195に答えよ

K 社健康保険組合の管理栄養士である。K 社では男性の高血圧症の者の割合が高い。その原因の一つに食塩の過剰摂取が考えられた。そこで、男性社員の食塩摂取量の減少を目的として、利用率の高い社員食堂において、減塩メニューの充実による食環境整備と減塩教育を行うことになった。7 10 月の 4か月間を実施期間とし、実施前後に食塩摂取量を把握して評価することとした。A 事業所(男性 200 人)を介入群(食環境整備および減塩教育)、同じ地域で、年齢構成、就業状況および規模が近似した B 事業所(男性 180 人)を比較群(減塩教育のみ)とした。

 

38-193 介入効果を検証するために、K 社健康保険組合、A 事業所及び B 事業所の管理栄養士 3 人で、食塩摂取量の変化を調べた。対象者と調査者の負担が少なく、かつ、より高い精度で食塩摂取量を推定するための調査法である。 最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ ナトリウムを多く含む食品の過去 1か月間の摂取頻度について、チェックシートに記入してもらう。

⑵ 7 日間毎日、飲食した全てのものの写真をスマートフォンで送付してもらう。

⑶ 3 日間の面接による 24 時間食事思い出し法を実施する。

2 日間の随時尿中ナトリウム値及びクレアチニン値を測定する。

 

38-194 取組実施前後の食塩摂取量の変化量について、A 事業所、B 事業所とも正規分布であることを確認した上で、結果を示した(表)。統計学的な有意水準は両側 5 %とする。取組の効果の評価として、最も適当なのはどれか。 1つ選べ。

両事業所とも、摂取量に有意な変化はみられなかった。

両事業所とも、摂取量は有意に減少した。

⑶ A 事業所は、摂取量が有意に減少した。

⑷ B 事業所は、摂取量が有意に減少した。

⑸ 両事業所とも、変化を判断できなかった。

 

38-195 取組実施前後の食塩摂取量の変化量を、両事業所間で比較するに当たり、考慮すべき評価デザインの限界である。最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ 群間で対象者の生活背景が異なっている可能性があること。

⑵ 群間で調査の協力率に差があること。

⑶ 介入期間後も効果が継続するかを調べていないこと。

実施前後で季節が異なること。

 

厚生労働省. 『第38回管理栄養士国家試験の問題(午後の部)』(2024) .

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001218344.pdf, (2025年2月13日閲覧)

解答・解説を見る

 

193 食塩の摂取量を最も正確に調べる方法は尿中のナトリウム量を測定する方法である。

特に随時尿中のナトリウム排泄量の測定が最も正確に調べることができ、選択肢の中では(4)が該当する。

他の選択肢は、問題文の「調査者と対象者の負担が少なく、より高い精度として」不適であるため誤りとなる。
※随時尿の採取が負担が少ないかどうかは個人的に疑問が残る。

 

⑴ ナトリウムを多く含む食品の過去 1か月間の摂取頻度について、チェックシートに記入してもらう。

ナトリウムを多く含む食品の摂取頻度(唐揚げ1週間に1回 80g程度etc)などでは、正確な測定どころか推測することも難しい

 

⑵ 7 日間毎日、飲食した全てのものの写真をスマートフォンで送付してもらう。

写真を撮って送付するだけなので対象者の負担は少ないが、7日間全ての食事の重量や栄養価計算を行うことは調査側(管理栄養士側)の負担が非常に大きい

 

⑶ 3 日間の面接による 24 時間食事思い出し法を実施する。

24時間思い出し法は対象者の負担は少ないが、(2)と同様に調査側(管理栄養士側)の負担が非常に大きい

調査者側が、正確に聞き取りできるのであれば、高い精度を維持することはできる。

 

2 日間の随時尿中ナトリウム値及びクレアチニン値を測定する。

前述のとおりである。24時間蓄尿が最も精度が高く、

次いで、この選択肢の随時尿中のナトリウムとクレアチニン値から推定する方法である。

 

 

38-194 2者の間に有意な差(有意差)があるかどうかをみるための方法の一つとして、

「95%信頼区間が0を跨がない場合」という考え方がある。

これは「95%信頼区間が正の範囲のみ」 または 「95%信頼区間が負の範囲のみ」にとどまっている場合である。

例えば、測定値の変化量についての95%信頼区間が

0.100.20

–0.20–0.10

–0.200.20

とあるとき、①と②は正の数または負の数の間のみを指すため「有意差あり」となり、

③は95%信頼区間が-0.20〜0.20と

負の数正の数の範囲に広がっており、これを「0を跨ぐ」とみなし、「有意差なし」となる。

あとは、①は有意に増加した。②は有意に低下した。(③は有意な差はなかった)というように表す。

※統計学的には帰無仮説や有意水準の話をするべきですが、ここでは問題を解くための知識を優先するため割愛しました。
突然95%信頼区間を用いるのは正式な考えではないことは承知しています。

 

上記をベースに考えるとA事業所は95%信頼区間が–0.98 〜 –0.10と負の数の範囲内であるため

有意に低下しているということになる。

一方で、B事業所は–0.91 〜 0.21 と負の数〜正の数の範囲へと「0を跨いでいる」ため

有意差なしと考えられる。

これを元に選択肢を精査すると(3)が正答とわかる。

 

両事業所とも、摂取量に有意な変化はみられなかった。

両事業所とも、摂取量は有意に減少した。

⑷ B 事業所は、摂取量が有意に減少した。

⑸ 両事業所とも、変化を判断できなかった。

A事業所のみが低下しているため (1)(2)(4)は誤り

A事業所が低下していると判断できているので(5)は誤り

 

⑶ A 事業所は、摂取量が有意に減少した。

上記の通り。

 

 

38-195 今回の調査は1日あたりの食塩摂取量評価指標にしているが、

介入した内容は、減塩教育と社員食堂での減塩メニューの充実昼食なので、

評価項目:1日あたり摂取量 VS 介入項目:昼食 となり

評価項目に関係する、朝食や夕食の内容には介入できていないことに留意する必要がある。

例えば、夕食だけに限っても

家族が準備する、コンビニ弁当か外食ばかり、食べない

などさまざまな状況が考えられ、これらの生活習慣までには

介入できていないことを踏まえて選択肢を見る必要がある。

 

⑴ 群間で対象者の生活背景が異なっている可能性があること。

正しい選択肢である。上記の通り。

生活背景が異なるため一概に「昼食への介入や減塩教育が効果的で、A事業所での減塩に繋がった」とは断言できず

生活習慣や生活背景なども考慮すべきである。

 

⑵ 群間で調査の協力率に差があること。

それぞれの協力率は

A事業所:対象者200人中、参加者170人→ 170/200 = 0.85(85%)

B事業所:対象者180人中、参加者155人→ 155/180 = 0.86(86%)

大差はなく誤りである。

※計算する時間がない場合は対象者がA200人, B180人でBの方が1割少ない
参加者もA170人, B155人で、Bの方がほぼ1割少ない→参加率はほとんど変わらない
とあたりをつけることもできる。

 

⑶ 介入期間後も効果が継続するかを調べていないこと。

介入期間後も効果が継続すること自体は望ましく、調査する意義があるかもしれないが

この研究の目的は、食環境整備の取り組み前後で介入効果があるか(食塩摂取量が変化するか)

なので、この選択肢は本研究の評価デザインの限界に関する内容ではない

 

実施前後で季節が異なること。

食塩摂取量自体に季節間の変動は考えられるが

今回比較したA事業所とB事業所は同時期に調査を実施しているため

2群を比較するにあたり季節変動を考慮する必要はない

 

 

文責:アヒル


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