38-185, 186, 187 K 病院に勤務する管理栄養士である。患者は、72 歳、男性。独居。1か月前から労作時の呼吸苦が出現した。

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38-185, 186, 187 次の文を読み「185」、「186」、「187」に答えよ

K 病院に勤務する管理栄養士である。患者は、72 歳、男性。独居。1か月前から労作時の呼吸苦が出現した。1 週間前から呼吸苦の増強とともに、食欲不振、下痢、下肢の浮腫が加わり、弁膜症による慢性心不全の急性増悪と診断され緊急入院となった。身長 160 cm、体重 50 kgBMI 19.5 kg/m2。発熱なし。空腹時の血液検査値は、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)840 pg/mL(基準値18.4 pg/mL 未満)、LDL コレステロール 98 mg/dL、アルブミン 2.8 g/dLeGFR 68 mL//1.73 m2、酸素飽和度 93%。

 

38-185 この患者の消化器症状(下痢)の原因として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ 感染性腸炎

⑵ たんぱく漏出性胃腸症

⑶ バクテリアルトランスロケーション

⑷ 過敏性腸症候群

 

38-186 入院 2 日目、バイタルサインは安定し呼吸苦と消化器症状が改善してきたため、静脈栄養法に加え、経腸栄養法を開始することとした。静脈ルートを確保する目的として、静脈栄養法では 200 kcal/日(1,000 mL)が投与されており、経腸栄養法で 800 kcal/日を追加することとした。使用する栄養剤として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ 希釈した半消化態栄養剤(0.5 kcal/mL

⑵ 半消化態栄養剤(1.0 kcal/mL

⑶ 半消化態栄養剤(2.0 kcal/mL

⑷ 成分栄養剤(1.0 kcal/mL

 

38-187 入院 6 日目、心不全症状は改善し、消化器症状も消失した。退院に向けて栄養食事指導を行うことになり、入院前の普段の食事内容を聞き取った(表)。この食事内容を基に改善点を指摘した。その内容として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ 鶏唐揚げを焼き魚にする。

⑵ 野菜の摂取量を増やす。

⑶ レトルト粥をご飯に変える。

⑷ 冷奴を半分に減らす。

 

厚生労働省. 『第38回管理栄養士国家試験の問題(午後の部)』(2024) .

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001218344.pdf, (2024年2月9日閲覧)

 

解答・解説を見る

 

38-185 慢性心不全の急性憎悪で緊急入院しており、

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が非常に高いため、

心臓にかなりの負担が生じていると考えられ、

下肢の浮腫があるので肺以外での浮腫が生じる右心不全の可能性が高い

 

⑴ 感染性腸炎

1週間前からの呼吸苦と下痢の症状だけなら、感染性腸炎の可能性はあるが、

労作時の呼吸苦が1ヶ月前から生じていたこともあり一過性の感染症が1ヶ月以上継続しているとは考えづらい

 

⑵ たんぱく漏出性胃腸症

正しい選択肢である。

右心不全により肺以外の全身の静脈でうっ血が生じるが、

この患者の場合、腸管で静脈うっ血が生じ、腸管内へアルブミンなどのたんぱく質が漏出している可能性が高い

腸管内にアルブミンが漏出することで腸管内の浸透圧が高まり、腸管内への水の浸出によって下痢を引き起こす

 

⑶ バクテリアルトランスロケーション

バクテリアルトランスロケーションは比較的長期間、経静脈栄養が実施された場合、

腸の上皮組織が萎縮しダメになることで腸内細菌などが、体内(血管内など)に移行することで生じるものである。

この患者は、入院までは経口摂取をしていたと考えるのが妥当でバクテリアルトランスロケーションが生じているとは考えづらい

 

⑷ 過敏性腸症候群

過敏性腸症候群は精神的なストレスに対する症状なので、

問題文中の「弁膜症による慢性心不全の急性増悪と診断され緊急入院」と反するため考えづらい。

 

※実際の臨床現場であれば感染性腸炎や過敏性・・・が併発してる可能性もあるかもしれないが
そんなことを言い出すと国試にならないので、素直に問題文から読み解くべきである。

 

 

38-186 症状は安定したものの患者は右心不全を呈していることから、血液量の増加による心臓への負担を避けたい。

そのため、可能な限り摂取する(体内に入れる)水分は減らしたい。

つまりできるだけ高濃度の栄養剤を使いたい。ということになる。

このことを考慮すると、(1)~(3)はすべて半消化態栄養剤なので

濃度が濃いものを選ぶべきである。よって(1)と(2)は除外され

可能性としては残った(3)の半消化態栄養剤 か (4)の成分栄養剤となる。

この患者は消化器症状が改善してきているため、積極的に(4)成分栄養剤を選ぶ理由がなく

(3)半消化態栄養剤(2.0 kcal/mL)が適していると考えられる。

 

⑴ 希釈した半消化態栄養剤(0.5 kcal/mL

⑵ 半消化態栄養剤(1.0 kcal/mL

⑶ 半消化態栄養剤(2.0 kcal/mL

⑷ 成分栄養剤(1.0 kcal/mL

 

 

38-187 入院6日目で心不全症状は改善し、消化器症状も消失しているので

退院に向けて栄養食事指導は再発予防が主な目的になると考えられる。

再発予防に向けては水分や食塩(ナトリウム)の過剰摂取を控えることや、

アルコールや運動を最低限に、禁煙などを話すことが望ましい。

 

⑴ 鶏唐揚げを焼き魚にする。

食塩量の増加が考えられるため不適である。

 

⑵ 野菜の摂取量を増やす。

→カリウムなどを摂取するために野菜の摂取量を増やすことは大切だが、

再発予防のための指導で、野菜の摂取量を増やすのは優先順位として低い

※他の選択肢に明確に適したものがなければこの選択肢でも良いかもしれない。

 

⑶ レトルト粥をご飯に変える。

正しい選択肢である。

粥をご飯に変更すると水分量が減るため心臓への負担は減る

普段から唐揚げ、クッキー、餃子を食しているため咀嚼能力には問題がなく

ご飯に変更しても支障がないためこの選択肢が最適となる。

 

⑷ 冷奴を半分に減らす。

豆腐を半分にすることで水分量が多少減らせるかもしれないが、

たんぱく質の摂取量も減ってしまうため、水分量を減らすのが目的であれば

(3)の方がより適しているため、この選択肢は最適とはならない

 

文責:アヒル


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