38-174 「薬物治療により、症状は改善してきた。」とあり、ここでの薬物とは鉄剤のことで、症状は鉄欠乏性貧血のことである。
したがって、ここで鉄の摂取量を増やす必要はない
〇⑴ エネルギー摂取量を増やす。
表中の主食を見ると
朝:おにぎり1個、昼:栄養飲料(ゼリータイプ)、夕:ご飯100g
とあり、これは一般的に少なすぎる。
実際、対象者のBMIは17.6 kg/m2と低く、エネルギー摂取量を増加させる必要があるため(1)が正答となる。
⑵ たんぱく質摂取量を増やす。
朝:ヨーグルト、昼:サラダチキン、夕:納豆, ひき肉
と複数の食品から複数回摂取しており、優先順位としては低くなる。
※国試の問題で(2)を正解にしたい場合、わざわざ毎食たんぱく質を食べさせないし、そもそもサラダチキンの量がわからないので判定できない。
おにぎりや納豆などは1個や1パックの量が一般的な共通認識としてあるが、サラダチキンのポーションサイズが一般に共通認識があるとは言えない。
⑶ 鉄摂取量を増やす。
上記の通り、症状が改善してきているため、鉄の摂取量を増やすのは「最も適切」とはなり得ない。
⑷ 水分摂取量を増やす。
朝:コーンスープ、昼:栄養飲料、夕:りんごジュース
と複数の食品から複数回摂取しており、優先順位としては低くなる。
※国試の問題で(4)を正解にしたい場合、わざわざ朝食にスープや夕食にジュースを飲ませない。
※アヒルの個人的な感想ですが、この手の問題でご飯(150g, 1杯)や、ヨーグルト(80g)など具体的な量が書いてあるものほど
「ご飯100g (or おにぎり1個)じゃ少なすぎるよね」とか「1日でご飯500gは食べ過ぎじゃない?」とか
選択肢を選ばせる(消させる)ために強調して書いてある気がします。
今回の場合は糖質(主食)の量が極端に少ないことを明記するために量を書いている気がします。
言い換えると、量が記載されていないものは判断させる気がない可能性が高いです。
たとえば「サラダチキン」だけだと1gなのか100gなのか10000000000gなのかわからないので
結果として「設問からは、たんぱく質の過不足はわからない。」となります。
この場合、(2)が答えになる可能性は限りなく低く、(2)を答えにすると不適切問題になりかねません。
本番で、究極に行き詰まったらこのような考え方で選択肢を少しでも削ることを考えましょう。
38-175 前問の結果、エネルギー摂取量が改善し体重が増加している。
また、体調が悪い日はなくなり、パフォーマンスも向上していると実感しているため
現状の実感を肯定し、現在の食事を続ける(現状維持)アドバイスが重要である。
体重が増加することと、体調不良の解消、パフォーマンスの向上をうまくリンクさせることで
本人への心身への負担が少ない状態で、栄養マネジメントも進めることが可能と考えられる。
⑴ 体重が増えないように、練習量を増やしましょう。
体重は1.5kg増えたが、いまだにBMI18.2であり、せめてもう少し増やす必要があるため、体重を増やさないようにする助言は不適である。
また、BMIの計算をせずとも、この段階での体重維持は鉄欠乏性貧血の再発が考えられるため、いずれにせよ不適である。
⑵ 体調不良が改善したので、食事指導は終わりにしましょう。
問題文の通り、対象者には体重増加に伴って体調が良くなった実感と、選手に選ばれるためにこれ以上体重を増やしたくないという葛藤がある。
そのため、「体調が良くなったので食事指導は終わりにします」と、対象者を突き放す言い方は避けるべきである。
ここで突き放すと、元の状態に戻ってしまう恐れもあり継続した指導・支援が必要である。
〇⑶ パフォーマンスも良くなったと感じているのですね。もう少し今の食事を続けてみましょう。
パフォーマンスの向上を実感していることを肯定・承認しつつ、スポーツに適した食習慣を理解・定着させるために
「現状維持」を促すアドバイスが選択肢の中で最適である。
⑷ もう少し体重を増やしたほうが、表現力も上がると思いますよ。
これ以上体重を増やしたくないという対象者に、「もう少し増やせ」とストレートに言うのは
実質的に「対象者の否定」であり、不適である。
文責:アヒル