38-188, 189, 190 K 病院の消化器内科病棟に配置されている管理栄養士である。患者は、75 歳、男性。C 型慢性肝炎で、10 年前より通院加療していた。摂食機能に問題はない。

スポンサーリンク


38-188, 189, 190 次の文を読み「188」、「189」、「190」に答えよ

K 病院の消化器内科病棟に配置されている管理栄養士である。患者は、75 歳、男性。C 型慢性肝炎で、10 年前より通院加療していた。摂食機能に問題はない。最近、朝方の全身倦怠感が強くなり受診したところ、精査目的で入院となった。入院時、身長 165 cm、体重 55 kgBMI 20.2 kg/m2。標準体重 60 kg。浮腫()、腹水()。空腹時の血液検査値は、アルブミン 2.7 g/dL、血糖90mg/dLAST 65 U/LALT 50 U/L、アンモニア 65 μg/dL (基準値3080 μg/dL)。

 

38-188 精査の結果、肝硬変、重症度は Child-Pugh 分類の C と診断され、早朝の呼吸商は低下していた。この患者の優先すべき栄養療法である。最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ たんぱく質制限

⑵ 食塩制限

⑶ 鉄の付加

⑷ LESlate evening snack)の導入

 

38-189 この患者における、 1 日当たりの指示エネルギー量と指示たんぱく質量の組合せである。最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

    エネルギー          たんぱく質

    (kcal/日)             g/日)

1,500                          35

1,500                          70

2,100                          35

2,100                          70

 

38-190 毎日モニタリングしていたところ、患者との意思疎通が困難となり、患者の食事摂取量は著しく低下してきた。血液検査値は、アルブミン2.5 g/dL、血糖 92 mg/dLAST 68 U/LALT 52 U/L、アンモニア 106 μg/dL であった。この状況での栄養管理として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ 投与する総エネルギー量を減らす。

⑵ 分割食にする。

⑶ 肝不全用経腸栄養剤の投与を開始する。

⑷ 末梢静脈栄養を開始する。

 

厚生労働省. 『第38回管理栄養士国家試験の問題(午後の部)』(2024) .

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001218344.pdf, (2025年2月10日閲覧)

解答・解説を見る

 

38-188 問題文より、肝硬変で重症度は Child-Pugh 分類の C と診断されているため

この患者は肝硬変の非代償期のかなり重度の状態であると考えられる。

Child-Pugh 分類肝硬変の重症度分類
肝性脳症, 腹水, 血清ビリルビン, 血清アルブミン, プロトロンビン活性値をスコア化

A → 代償期(軽度の肝硬変)
B → 非代償期(中程度の肝硬変)
C → 非代償期(重度の肝硬変)

また「早朝の呼吸商は低下」とあるため、夜間の低血糖&脂肪酸代謝の亢進が考えられる。

これは肝硬変非代償期で肝臓がダメになり、糖新生やグリコーゲン貯蔵が出来ず

血糖の維持が難しくなっている状態である。

 

⑴ たんぱく質制限

肝硬変非代償期なので、肝性脳症などを回避するためにたんぱく質制限を行うこともあるが

現時点では浮腫&腹水がなく、アンモニアも基準値内のため、この患者に対し優先すべき栄養療法ではない

 

⑵ 食塩制限

肝硬変非代償期で、浮腫&腹水が生じている場合であれば

食塩制限をすることがある。しかし、現時点では浮腫&腹水がないため

(1)と同様、優先すべき栄養療法ではない

 

⑶ 鉄の付加

肝硬変非代償期で鉄を制限することはあっても付加することは原則ない

※鉄欠乏の症状(鉄欠乏性貧血etc)が現れている場合は除く。

鉄を制限する理由は、肝臓に鉄を貯蔵するときに生じる

活性酸素が肝細胞を障害し肝硬変を悪化させるためである。

 

LES (late evening snack)の導入

前述の通り、早朝呼吸商の低下が見られているため夜間の低血糖&脂肪酸代謝の亢進が考えられる。

これは、肝硬変により、肝臓にグリコーゲンが貯蔵できない、糖新生ができないなどが生じ、

夜間絶食中の血糖維持ができなくなっているためである。

そのため、就寝前におにぎりやサンドイッチなど炭水化物メインで200kcal程度の軽食を摂取し

夜間の低血糖を防ぐ必要がある。

 

38-189 問題文より、患者は「身長 165 cm、体重 55 kgBMI 20.2 kg/m2。標準体重 60 kg」とありこれらの値を用いる。

 

エネルギーに関して、肝硬変非代償期での特別な付加はないため

基本形の「標準体重kg × 30(〜35) kcal/kg」を用いて計算する。

そうすると、60kg × 30(〜35) kcal/kg = 1800 〜 2100 kcal/日となり

(1), (2) 1500 kcal/日

(3), (4) 2100 kcal/日   となる。

 

また、たんぱく質は肝硬変非代償期などで

浮腫&腹水がある場合は制限する必要があるがこの患者は、浮腫()、腹水()、アンモニア 65 μg/dL(基準値内)のため

特段制限する必要がなく、

基本形の「標準体重kg × 1.0~1.2 g/kg」を用いて計算する。

そうすると、60kg × 1.0~1.2 g/kg = 60 〜 72 g/日となり

(1), (3) 35 g/日

(2), (4) 70 g/日   となる。

 

上記を合わせて、正答は

 エネルギー2,100kcal/日,  たんぱく質 70 g/日

 

 

38-190 問題文に「患者との意思疎通が困難」、「アンモニア 106 μg/dL (基準値上限超え)」という旨があることから

肝性脳症が生じていると考えられる。これらを元に選択肢を精査していく。

 

⑴ 投与する総エネルギー量を減らす。

投与エネルギーを減らすと、体たんぱく質の分解(エネルギー源としての利用)が亢進

たんぱく質, アミノ酸の分解を通じてアンモニアが発生し、肝性脳症が悪化してしまうため不適切である。

 

⑵ 分割食にする。

188に出た、早朝低血糖回避のためのLESなどの場合は、分割食が効果的であるが

この問題の場合、分割しても1日あたりのたんぱく質摂取量は減らないため不適である。

また問題文中に「患者との意思疎通が困難となり、患者の食事摂取量は著しく低下してきた。」とあるため

分割食に変更しても、経口摂取の継続は難しいと考えられる。

 

⑶ 肝不全用経腸栄養剤の投与を開始する。

(2)の解説の通り経口摂取は不適なため、経腸栄養剤の投与を選択することが望ましい

また肝不全用経腸栄養剤の投与を行うことによって

アミノ酸インバランスの是正を試みる。

 

⑷ 末梢静脈栄養を開始する。

(2)の解説の通り、経口摂取は不適であるが、静脈栄養まで行う必要はない

経腸栄養剤の利用で十分である。

 

 

文責:アヒル


スポンサーリンク


Insert math as
Block
Inline
Additional settings
Formula color
Text color
#333333
Type math using LaTeX
Preview
\({}\)
Nothing to preview
Insert