35-185,186,187 次の文を読み「185」、「186」、「187」に答えよ。
K 大学クリニックに勤務している管理栄養士である。患者は、21 歳、女性。大学入学と同時に一人暮らしを始めた。中学生の時からダイエットを始め、大学入学後、おかずには野菜だけを食べる生活を続けている。最近、運動時に息切れするようになり、クリニックを受診した。また他院にて、舌炎を指摘されている。BMI 18.5 kg/m2。血液検査値は、アルブミン 4.2 g/dL(基準値3.7~5.5 g/dL)、ALT 18 U/L、AST 20 U/L、総ビリルビン 0.8 mg/dL、尿素窒素 16 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、赤血球234×10⁴/μL(基準値360~489×10⁴/μ)、ヘモグロビン 8.5 g/dL、MCV(平均赤血球容積) 112 fL(基準値 79~100 fL)、MCHC(平均赤血球血色素濃度)32.4%(基準値 26.3~34.3%)。
35-185 この患者に行った追加の血液検査結果である。最も適切なのはどれか。 1 つ選べ。
⑴ 不飽和鉄結合能(UIBC)高値
不飽和鉄結合能は、鉄欠乏性貧血の際に高値となる。多くの場合、鉄欠乏性貧血ではMCVやMCHCが低値となるため、(1)はこの患者には当てはまらない。
⑵ エリスロポエチン低値
*エリスロポエチンは赤血球の産生に関与するホルモンで、腎臓で生成される。腎性貧血で低値を示す。
*腎性貧血では、MCVやMCHCは正常であることが多い。
総じて、この患者は腎性貧血である可能性は低く、不適切。
〇⑶ ビタミン B12 低値
患者の以下の採血結果、
①ヘモグロビン 8.5 g/dL=低値
②MCV 112 fL=高値
➂MCHC 32.4%=正常値
より、巨赤芽球性貧血が疑われる。巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12または葉酸欠乏によって起こる貧血の総称である。
ビタミンB12は肉や魚や卵などの動物性食品に主に含まれる。患者がおかずには野菜だけを食べる生活をしていることから、ビタミンB12低値である可能性が高い。
⑷ 葉酸低値
血液検査結果より、巨赤芽球性貧血が疑われ、葉酸低値である可能性もあるが、患者の食生活の状況(野菜だけを食べる生活)を考えるとこの検査結果は最も適切な選択肢とは言えない。
35-186 この患者に認められる症候である。最も適切なのはどれか。 1 つ選べ。
⑴ 匙状爪は、
鉄欠乏性貧血で認められる症候である。
⑵ たんぱく尿
⑶ 血尿
〇⑷ 神経障害は、巨赤芽球性貧血で認められる症候の一つである。
神経障害のほかにも、舌炎や下痢などがある。
35-187 本人は、今回の受診の結果をきっかけに、これからは食生活を見直したいと思っている。この患者への初回の栄養食事指導である。最も適切なのはどれか。 1 つ選べ。
⑴ 納豆や豆腐などの大豆製品を積極的に食べましょう。
→たんぱく質は摂取できるが、ビタミンB12は含まれず、エネルギー量も少ないことから不適切。
〇⑵ 肉、魚、卵、乳製品を、 1 食に 1 品以上食べましょう。
*患者はビタミンB12不足が疑われること
*野菜中心の生活で、たんぱく質摂取量の不足が予想されること
*BMIが低く、十分なエネルギー、たんぱく質の摂取が必要なこと
などの理由から、(2)が最も適切であると考えられる。
⑶ ほうれん草など、緑黄色野菜を積極的に食べましょう。
野菜はすでに十分に摂取できている。
また、緑黄色野菜にはビタミンB12を含まないことから不適切。
⑷ 野菜は茹でこぼして食べましょう。
茹でこぼしによってカリウム含量の減少が期待できるが、この患者にカリウム制限は必要ないため不適切。