ナッジ(nudge)とは望ましい行動を実行できるように、強制することなくそっと後押しをすること。
ナッジを効果的に使うための有効なフレームワークとして
英国のThe Behavioural Insights Team(BIT)が発表したのが「EAST」[1]であり、
簡単(Easy)
魅力的(Attractive)
社会的(Social)
タイムリー(Timely) それぞれの頭文字である。
「E:Easy(簡単)」
意思決定のために「選択する」ということ自体の負担を減らすこと。
面倒や手間を減らしたり、必要でない情報を削除して何をすればよいのか
シンプルに表現したりするなどによって、簡単にしたり、簡単に見せたりする。
「A:Attractive(魅力的)」
その行動によって得られる何かしらのインセンティブを用意することで、望ましい行動につなげる。
「得した感じ」や「魅力」を味わえるようにすることや、
「失う痛みを回避しようとする」人の性質を理解して、正しい選択をしてもらう[2]という方法もある。
「S:Social(社会的)」
人は無意識のうちにその時代や地域の社会規範にのっとって生活をしており、
周囲の環境や人との相互作用で考えが形成されるという性質を利用する。
同じような状況の他の人々がどのように行動するかを伝えるなどの方法がある。
「T:Timely(タイムリー)」
受け入れやすいタイミングで促す。
人の思考や行動は目の前の出来事の影響で簡単に変わることも多い。
気になる時に、気になることを伝えるなど。
これらを踏まえて選択肢を見てみると・・・。
(1) 減塩メニューを、「数量限定」と書いて販売する。
限られた人しか食べられないものにすることで特別なものになり、
魅力的に感じられる「A:Attractive(魅力的)」を用いた方法である。
(2) 減塩メニューに、「みんなに選ばれています。」と書かれた POP をつける。
「ほかの人はやっている」という認識を持たせるのは、
周囲に影響されることを利用した、「S:Social(社会的)」を用いた方法である。
〇(3) 健診の案内に合わせて、減塩メニューのキャンペーンを打つ。
正しい選択肢である。
検診の案内によって健康へ意識が向いたタイミングでのキャンペーンは、
関心を高めやすくなると考えられる。
気になる時に、気になることを伝える、「T:Timely(タイムリー)」に当てはまる。
(4) 単品メニューは変えずに、日替わり定食の主菜だけを減塩メニューにする。
利用者が食事をするための意思決定にかかる手間を比較したとき、
単品のおかずを1つずつ選択することより、日替わり定食にする方が簡単である。
より簡単な方を減塩にしておくことで、減塩メニューを選択させやすくしている「E:Easy(簡単)」に当てはまる。
(5) 全てのメニューを、減塩メニューにする。
全てを減塩メニューにすることは、利用者にほかの選択肢を与えず、
強制的に望ましい行動となるように仕向けている。ナッジを活用した方法ではない。
※引用元
[1] Four Simple Ways to Apply EAST Framework to Behavioural Insights.,The Behavioural Insights Team,
https://www.bi.team/publications/east-four-simple-ways-to-apply-behavioural-insights/(2024/8/31閲覧)
[2] 厚生労働省, 明日から使えるナッジ理論,https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000500406.pdf(2024/8/31閲覧)
文責:アヒル(O)