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ご飯に生卵をのせ、しょうゆなどの調味料で味付けし混ぜて食べる卵かけご飯は、
簡単で美味しく「白米・生卵・醤油」といったこの国ならではの食材を同時に味わうことができ、日本の食文化を語るうえで欠かせない料理です。
この記事では、卵かけご飯に含まれる栄養素を知るだけでなく、どれだけ必要な栄養素をとれているかを把握するため、グラフで「1食当たりの必要量*」と「卵かけご飯1杯の栄養価」を比較しています。
(詳しい栄養価が知りたい方はこちらをご参照ください。→卵かけご飯栄養価計算(Excel栄養君Ver.3))
*栄養素によって「必要量」の意味合いが異なりますがここでは説明を省略します。
では、卵かけご飯1杯で、1食に必要な栄養素をどれだけ摂取することができるのでしょうか?
今回は、20歳代の女性の場合を例にみていきたいと思います。
目次
卵かけご飯1杯で1食に必要な栄養素を何%摂れるか?
下の図は、1日に必要な摂取量を1日3食として3で割って求めた「1食当たりの必要量」と、「卵かけご飯1杯の栄養価」を比較したものです。
(軸の上の数字、比率(%)=「卵かけご飯で摂れる栄養素の割合」を表しています。そして、この数字が100に近いほど1食に必要な量を満たしているということになります。)
*Excel栄養君Ver.7.0を用いて算出。食品の内容は、めし・精白米(水稲)130g,鶏卵・全卵 生77g,こいくちしょうゆ6g
*日本人の食事摂取基準(2015),女性、18~29歳、身体活動レベル(ふつう)
やはり、卵かけご飯1杯だけでは全ての栄養素を充足させることは難しいようです。
特に少ないものをピンクにしています。
この中でも特に、ビタミンCは精白米にも鶏卵にもほとんど含まれていないので、比率は0%となっています。
エネルギーも1食に取りたい量の50%程度しか摂取できていませんし卵かけご飯だけでは物足りないので、もう少し何かを付け足すと良さそうです。
では、何を付け足すと良いのでしょうか?
精白米+「麦」で麦ごはんに
まず、食物繊維の不足を補うには精白米に大麦を足して「麦ごはん」にしてみるとよいかもしれません。
そうすることで食物繊維を+1g摂取できます。
麦には、食物繊維の中でも特に水溶性の食物繊維を多く含むという特徴があります。
最近は、白米と一緒に炊けるタイプのものが販売されており、簡単に用いることができます。
さらに、ミニトマトを付け足すと…
さらに、ミニトマトを5~6個(80g)足すと以下のようになります。
特に注目したいのは、ビタミンCと食物繊維です。
先ほどもお伝えした通り、ご飯と卵にはビタミンCが含まれていません。
そのため、卵かけご飯だけではビタミンCの摂取比率が0%でしたが、ミニトマトを足すことで1食に必要な量の77%まで摂取できる結果となりました。
(ミニトマト80gに含まれるビタミンCは26㎎)
ビタミンCは水溶性ビタミンで体内に長時間留めておくことができないので、1日3回の食事でこまめに摂りたい栄養素です。
また、ミニトマト5~6個(80g)をプラスすることで、食物繊維は1.1g摂取することができます。
ミニトマトは調理しなくても手軽に食べられるので忙しい朝にも役立ちますし、食卓に彩りを与えてくれます。
また、ドレッシングをかけずにそのまま食べられることができるので減塩しながら野菜を摂りたい方におすすめです。
カルシウムが足りない問題をどうするか?
カルシウムは、骨や歯の健康を保つために欠かせない栄養素ですが、
近年の国民健康・栄養調査で、日本人の摂取量は十分でないことが分かっています。
骨の強さの指標である骨密度は、加齢とともに低下しますが、特に女性は閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少することによって、骨密度が急激に低下するといわれています。
そのため、若いうちにしっかりと食事と運動で強い骨を作っておくことが大切です。
そんなカルシウムですが、やはり卵かけご飯だけでは十分に摂取できないようです。
干しシラスを乗せてみると?
卵かけご飯との相性を考え、干しシラスをプラスしてみた場合で計算してみました。
※100%を超えるものは上部を省略していますので、下部の数値をご参照ください。
※干しシラス=干しシラス(半乾燥品),日本食品成分表より
干しシラスを10gのせると上のような結果になります。
干しシラスには、100g当たり520㎎のカルシウムが含まれており1)少量でもカルシウムを摂取することが可能です。
また、ビタミンDについては比率は1食の400%となっており、干しシラス10gだけで1日の必要量以上を摂取することになります。
~追記~
「バランス良く食べる」って何?
よく「バランス良く食べましょう」という言葉を耳にするかもしれませんが、
この「バランス良く」とはどういう意味なのでしょうか?
私は、様々な栄養素があるなかで「バランス良く食べる」ということは、まずエネルギー源や身体をつくる基本的な材料となる炭水化物、タンパク質、脂質の3大栄養素をベースに考えるものだと思っています。
健康のことが話題になると、ビタミンやミネラルが注目されがちで、この記事でもビタミンやミネラルについて取り上げていますが
それ以前の問題として、エネルギーが足りているか、タンパク質や脂質はどれくらいとれているかなどに目を向けられていない人が多いのではないでしょうか。
それらをふまえた上で、その他の栄養素などについても考えられることができれば「バランスの良い食事」に一歩ずつ近づけるのではないかと考えます。
日本の生卵は安全?
世界でも生卵を食べる習慣のある国は少ないようです。
その背景として、鶏卵に付着するサルモネラ菌による食中毒のリスクが考えられます。
「日本の生卵は安全、海外の生卵は危ない」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、日本でも、卵による食中毒は数件、サルモネラ菌による食中毒は数十件(卵によるもの以外も含む)発生しています。
ただ、2011年の食品安全委員会による報告では、鶏卵5,400検体のうち、3検体しかサルモネラ菌(Salmonella Enteritidis)が検出されなかったという結果もでており3) 、
国内の市販鶏卵の汚染率は、0.0029%程度と予想されています2)。
また、世界でも鶏卵の安全性の調査が行われていて、オーストラリアで3%であったという報告もあり3)、
比べてみると、日本の鶏卵は世界でも安全のレベルが高いことがわかります。
しかし、いくら安全な卵でも保存方法を誤ると食中毒の危険が高まります。
特に、殻から出した卵液はたとえ冷蔵であっても長期間保存しないように注意しましょう。
まとめ
この記事を書こうと思ったきっかけは、おにぎりだけ、パンだけなど少ない食品に偏った食生活をしている方に
ほんのすこし何かを足すだけでも良いということを知るきっかけになってほしいと思ったからです。
たとえ卵かけご飯でも、ビタミンCが摂れなかったりとそればかり食べていたら栄養素が不足するリスクはゼロではありません。
1食だけではバランス良く栄養素を摂ることがいかに難しいかがわかります。
そのため、その1食で必要な栄養素を全て取ろうと考えるのではなく、数日間の範囲でバランスを考えられるようになると上級者だと思います。
また、毎食の栄養素摂取量を計算するのはとても手間がかかるため現実的ではありませんが、
買い物の際に栄養成分表示をチェックするなど普段自分がよく食べる食品にどれだけの栄養素が含まれているかを把握しておくことで、よりよい食生活を送ることができるのではないかと思っています。
参考文献
1)「日本食品成分表2017七訂 本表編」医歯薬出版,p96.
2)食品安全委員会(2011)「市販鶏卵におけるSalmonella Enteritidis汚染の実態解明とリスク評価法への活用について」
3)Yutaka Tamura(2013),Current Assessment of Salmonella Enteritidis Infection from Eating Raw Eggs and Associated Countermeasures.
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