38-182, 183, 184 Kクリニックに勤務する管理栄養士である。外来栄養食事指導を行っている。患者は、81 歳、男性。独居。10 年前に 2 型糖尿病を発症している。

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38-182, 183, 184 次の文を読み「182」、「183」、「184」に答えよ

K クリニックに勤務する管理栄養士である。外来栄養食事指導を行っている。

患者は、81 歳、男性。独居。10 年前に 2 型糖尿病を発症している。前院で経口血糖降下薬を処方されていたが、服用を忘れることが多く、食事は自由に摂取していた。血糖コントロールは不良で、最近は低血糖症状もみられることから、当クリニックへ紹介された。インスリン療法を開始することになり、毎食前のインスリン注射の指導を医師から受けた。明らかな糖尿病合併症はない。身長 165 cm、体重 53.1 kgBMI 19.5 kg/m2。血液検査値は、血糖(食後 2 時間)132 mg/dLHbA1c 8.3%。

 

38-182 インスリン療法開始前の栄養食事指導を行うに当たり、事前に撮ってもらった写真と聞き取りから 2 日間の食生活を確認した()。優先すべき指導内容として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ 炭酸飲料や菓子は控える。

⑵ ビールは控える。

⑶ 3 食とも主食を摂る。

毎日続けられる運動を始める。

 

38-183 1か月後に栄養食事指導を行った。患者は先月の指導内容を守っており、体重53.8 kgHbA1c 7.9% であった。体調が良くなったことから、買い物の前に 30 分散歩するようになり、風呂上がりに低血糖症状を起こすようになった。その時の指導内容として、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ インスリン投与量を減らす。

⑵ 入浴前に補食を摂る。

⑶ 3 食とも主食量を増やす。

⑷ 散歩時間を減らす。

 

 

38-184 さらに 1か月後に栄養食事指導を行った。体重53.6 kgHbA1c 7.7% であり、最近は低血糖にならなくなった。患者から「低血糖にならなくなったので、久しぶりに旅行に行こうと思います。旅行中に注意することはありますか。」と聞かれた。その時のアドバイスとして、最も適切なのはどれか。 1つ選べ。

⑴ アルコールは控えた方が良いですね。

⑵ パンとご飯は普段の量と同じにしましょう。

⑶ 炭酸飲料やお菓子は控えた方が良いですね。

⑷ 旅行先でも散歩は続けましょう。

 

厚生労働省. 『第38回管理栄養士国家試験の問題(午後の部)』(2024) .

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001218344.pdf, (2024年2月8日閲覧)

 

解答・解説を見る

 

38-182 インスリン療法は端的にいうと「毎日ほぼ同じ時間に、1日3食、バランスよく食べていることを前提に行われるものである。

特に主食(糖質)は、一定量摂取していないと低血糖を生じ、非常に危険である。

この患者の食生活の記録(図)を見ると、

この患者はどれだけ炭酸が好きなんだ

1日目昼食がせんべいのみ、に対して、夕食はしっかりと1食の分量を摂っている。

2日目朝食がコーヒーのみ、夕食がサイダーのみ、に対して、昼食は寿司と吸い物などでしっかり摂っている。

など、食事摂取量が1日の中で多すぎたり少なすぎたりすることが

インスリン療法にとって大敵であるため、現状のままインスリン療法に移ると

低血糖を起こしてしまう可能性がある。ゆえにまずはそこを是正する必要がある。

 

⑴ 炭酸飲料や菓子は控える。

単純に炭酸や菓子を控えるだけでは1日目昼夜絶食、2日目夜絶食となり、

この状態でインスリン療法を行うと今よりもさらに低血糖になる危険性が高まる。よって不適である

 

⑵ ビールは控える。

過剰なアルコールは控えるべきであるが「普段の日のパターン」でビール350mLは適正飲酒の範囲内であり

「特別な日のパターン」でビール700mLは、適正飲酒の範囲を超えているが、

特別な日のみで、日常的に飲酒しているわけではないため

是正すべき項目としての優先順位は高くなく、最適な指導内容には該当しない

 

⑶ 3 食とも主食を摂る。

正しい選択肢である。

前述の通り、インスリン療法時は主食の摂取量を一定に保つ必要があるので

主食を摂ったり摂らなかったりする食生活を早急に改善する必要があり、この指導内容が最も適切となる。

 

毎日続けられる運動を始める。

ただでさえ、食習慣の偏りによりインスリン療法で低血糖症状が出やすい中で

らに低血糖を誘発する原因となる運動一番最初に勧めるのは非常に危険である。

 

 

38-183 1ヶ月後の栄養指導時点で体重がわずかに増加しているが、

HbA1cが8.3%から7.9%に低下しており、

体調も散歩ができるほど良いと感じており順調である。

が、風呂上がりに低血糖症状を起こすようになったためそこに関する指導や提案が必要である。

低血糖の原因としては、食事や薬の量の誤りや時間の遅れ、過剰な運動や入浴、飲酒などがあげられる。

 

⑴ インスリン投与量を減らす。

HbA1cの低下など、現在のインスリン療法は順調に行っており、

上記のような「薬物量の誤り」や「時間の遅れなど」は考えづらいため

インスリンの投与量を減らす必要はないと考えられる。
※と、いうよりも管理栄養士の立場で「インスリン投与量を減らすよう」に指導することはあり得ない。
症状を主治医に共有し「インスリン投与量の変更を相談する」くらいが限界。
単独での医療行為ダメ絶対。

 

⑵ 入浴前に補食を摂る。

正しい選択肢である。

今回は入浴後に低血糖に陥る旨が述べられているため、

入浴時に低血糖を生じないように入浴前に補食を摂るよう勧めることが適している

 

⑶ 3 食とも主食量を増やす。

前述の通り、入浴による低血糖だと予想できるので

3食の主食量を増やす必要はないと考えられ、不適となる。

 

⑷ 散歩時間を減らす。

散歩(運動)が原因の低血糖ではないため運動を減らすことで

入浴後の低血糖は回避できないと考えられ不適である。

 

 

38-184 合計2ヶ月のインスリン療法でHbA1cも順調に低下し、低血糖症状も見られていないことから

普段の生活に問題は無いと考えられる。

その上で、旅行での注意点を挙げるとすれば

出先でも「食事量や時間を普段どおり適切に守る」ことである。

⑴ アルコールは控えた方が良いですね。

38-182と同様に、過剰なアルコールは避けるべきであるが、「普段の日のパターン」程度であれば大きな心配はない。

そのため「控えるべき」と禁酒を伝えるよりも、「過剰な飲酒をしないように」とアドバイスする方が良い。

ゆえにこの選択肢は最適とはなり得ない

 

⑵ パンとご飯は普段の量と同じにしましょう。

正しい選択肢である。

38-182の解説にも書いた通り、インスリン療法では低血糖を避けるために、主食量を普段と同じにすることが重要であるため

旅行という普段とは違う環境でも主食の量を守るように伝えることが重要である。

 

⑶ 炭酸飲料やお菓子は控えた方が良いですね。

初回の指導から2ヶ月経ち、血糖コントロール良好で低血糖も起こさなくなったことから

普段の炭酸飲料やお菓子類の摂取量や頻度は問題のない量・頻度になっていると考えられる。

そのため、(1)と同様に全てを禁止するのではなく「普段の量の厳守」「過剰摂取の禁止」とアドバイスする方が良い。

ゆえにこの選択肢は最適とはなり得ない

 

⑷ 旅行先でも散歩は続けましょう。

(1)や(3)と同様、現状で問題がないため、改めて提案する必要はない。

このように改めて提案することで、普段よりもさらに過剰に運動を行う可能性もあり、この提案は不要である。

運動に関してアドバイスする場合は、「過剰な運動を避ける」ことを勧める方が良い。

※旅行自体が運動なので、さらに意識して運動させると低血糖を起こす可能性が生じる。

 

 

文責:アヒル


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