A群β溶血性連鎖球菌感染(溶連菌感染)を契機とする急性糸球体腎炎とは、
溶連菌感染後に、免疫複合体が糸球体に沈着することで生じる腎炎である。
38-30(1)に「急性糸球体腎炎の多くは、A群β溶血性連鎖球菌感染が関与する。」という正答があり、
38-128(1)には、「IgA腎症は〔 糸球体 〕への IgA の沈着を特徴とする。」なども出題されている。
今回はそこからさらに踏み込んだ問題が出題されている。
⑴ 高齢者に多い。→〔 小児に多い 〕
A群β溶血性連鎖球菌感染(溶連菌感染)および、それに伴う急性糸球体腎炎は小児に多い。
⑵ 感染後〔 1~3週間 〕で発症する。
溶連菌感染後、1〜3週間後に生じる。
溶連菌感染による喉の腫れや痛み(咽頭炎・扁桃炎)が治癒した2週間程度あとに生じることが多い。
〇⑶ 高血圧を引き起こす。
正しい。糸球体の炎症によって血液を濾過することが難しくなる。(濾過するためのろ紙が詰まるイメージ)
そのため、水やナトリウムを体外に捨てることができなくなり高血圧を引き起こす。
⑷ 血清中の補体価は上昇する。 → 〔 低下する 〕
補体とは、血中のたんぱく質で、感染症や炎症性疾患などの際に、免疫反応を助ける重要な役割を持つ。
「抗体のはたらきを補う(サポートする)」ことから「補体」と呼ばれる。
上記のような疾患の際は、補体が消費され、血清中の補体価は低下する。
溶連菌感染以外に、全身性エリテマトーデス(SLE)や、シェーグレン症候群でも補体価は低下する。
⑸ 半数以上は慢性化する。→〔 慢性化しない 〕
小児では数週間~数か月で腎機能が回復し、慢性化はしない。
成人の場合ごくわずか慢性腎炎に移行することもあるが、半数以上ではない。
文責:アヒル