39-198 K県における高血圧症、脂質異常症、糖尿病の20歳以上の有病者数を推計するためのデータとして、最も適当なのはどれか。1つ選べ。
⑴ 人口動態調査による死亡の原因
人口動態統計の項目(出生、死亡、婚姻、離婚、死産)を見ても
有病者数はわからないため誤りである。
⑵ 患者調査による入院・外来の推計患者数
患者調査を用いると、入院している患者 and/or 通院している患者数はわかるが
医療機関に受診していない患者数は推計できないため、最も適当なものにはならない。
ゆえに誤り。
〇⑶ 国民健康・栄養調査に準じる方法で行った県民健康・栄養調査の身体状況調査結果
正しい。国民健康・栄養調査に準じる方法での身体状況調査では
身長、体重、腹囲、血圧測定、血液検査をおこなうので、
その結果から高血圧症、脂質異常症、糖尿病の全患者数を推計することができる。
よって、上記に準じた方法で行った県民健康・栄養調査の身体状況調査を用いれば
推計することができる。
⑷ 国民生活基礎調査(大規模調査年)における傷病による通院の状況
この統計では、傷病による通院の状況を自己申告で調査する。
自己申告である以上、そこから有病者数を推計することは難しい。
⑸ レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の特定健康診査データ
39-194同様、特定健康診査のデータを対象にすると、40歳〜74歳しか対象にできないので
それ以外の年齢層を推計することはできない。
39-199 県内のA大学は、県の協力のもと、20歳以上の県民を対象に前向きコホート研究を実施してきた。食塩および野菜の摂取量に関して、高血圧症、脂質異常症、糖尿病の罹患の相対危険を算出したところ、表の結果を得た。統計学的な有意水準は両側5%とする。この解釈として、最も適当なのはどれか。1つ選べ。
相対危険の考え方は
相対危険がピッタリ1だと、対象群と発症リスクは同じ。
相対危険1未満だと、対象群よりも発症リスクが低い。
相対危険1以上だと、対象群よりも発症リスクが高い。
となる。
また、問題文より、
「統計学的な有意水準は両側5%とする。」とあるので
95%信頼区間から有意差(意味の有る差)があるか検討することになる。
95%信頼区間とは「100回同じ調査をしたら95回はその範囲、区間に収まる」というもので
100回中95回で、相対危険が1未満であれば「“有意に”対象群よりも発症リスクが低い」
100回中95回で、相対危険が1以上であれば「“有意に”対象群よりも発症リスクが高い」
と判定できる。
さらに
100回中95回で相対危険が1以上だったり1未満だったりする(0.5〜1.5のように、1をまたぐ)場合
「有意な差は無い」となる。
考え方として
①相対危険が1よりも大きい or 小さい
②95%信頼区間は1を跨いでいないか?(1以下の範囲内 or 1以上の範囲内)
を見て、どちらも満たす場合、「相対危険が有意に低い(or 高い)」とみなせる。
〇⑴ 食塩摂取量は、7g/日より多い群に比べて、7g/日以下の群で、高血圧症罹患の相対危険が有意に低い。
正しい。高血圧症の段の食塩摂取量≦7g/日を見ると、
高血圧症の相対危険は0.68と1よりも低い値になっている。
かつ、95%信頼区間は「0.55〜0.85」と、1より低い範囲で収まっているため
高血圧症罹患の相対危険が有意に低いと判定できる。
⑵ 食塩摂取量は、7g/日より多い群に比べて、7g/日以下の群で、脂質異常症罹患の相対危険が有意に低い。
脂質異常症の段の食塩摂取量≦7g/日を見ると、
脂質異常症の相対危険は0.98と1よりも低い値になっている。
しかし、95%信頼区間は「0.62〜1.56」と、1をまたいでいるため
食塩摂取量7g/日以下の群は、7g/日より多い群と比べても、
脂質異常症罹患の相対危険に、有意な差は無いと判定できる。
⑶ 食塩摂取量は、7g/日より多い群に比べて、7g/日以下の群で、糖尿病罹患の相対危険が有意に低い。
糖尿病の段の食塩摂取量≦7g/日を見ると、
糖尿病の相対危険は0.89と1よりも低い値になっている。
しかし、95%信頼区間は「0.55〜1.44」と、1をまたいでいるため
食塩摂取量7g/日以下の群は、7g/日より多い群と比べても、
糖尿病罹患の相対危険に、有意な差は無いと判定できる。
⑷ 野菜摂取量は、350g/日未満の群に比べて、350g/日以上の群で、脂質異常症罹患の相対危険が有意に低い。
脂質異常症の段の野菜摂取量≧350g/日を見ると、
脂質異常症の相対危険は0.92と1よりも低い値になっている。
しかし、95%信頼区間は「0.62〜1.38」と、1をまたいでいるため
野菜摂取量350g/日以上の群は、350g/日より少ない群と比べても、
脂質異常症罹患の相対危険に、有意な差は無いと判定できる。
⑸ 野菜摂取量は、350g/日未満の群に比べて、350g/日以上の群で、糖尿病罹患の相対危険が有意に低い。
糖尿病の段の野菜摂取量≧350g/日を見ると、
糖尿病の相対危険は0.69と1よりも低い値になっている。
しかし、95%信頼区間は「0.46〜1.04」と、1をまたいでいるため
野菜摂取量350g/日以上の群は、350g/日より少ない群と比べても、
糖尿病罹患の相対危険に、有意な差は無いと判定できる。
39-200 設問199の表の結果を踏まえ、K県民の食事改善に向けたポピュレーションアプローチを実施することになった。
具体的内容として、最も適切なのはどれか。1つ選べ。
ポピュレーションアプローチとは、人口全体に対して、全体の健康改善・向上を目指す方法である。
一方で集団の中のハイリスク群だけにアプローチするハイリスクアプローチがある。
⑴ K県内のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、外食店に協力してもらい、野菜の多い料理を販売・提供してもらう。
これらの店舗は、利用者は多いと考えられるが、「野菜の多い料理を販売・提供してもらう」だけでは
K県民の食事改善に向けたポピュレーションアプローチになり得ない。
⑵ A大学の学生を対象とし、減塩のための標語コンテストを実施し、入選作品を広報に掲載する。
「広報に掲載する」時点で、目にする人が極端に限られるためポピュレーションアプローチになり得ない。
⑶ K県の県立病院の受診者を対象に、野菜摂取量増加と減塩の重要性が書かれたチラシを配布する。
「K県の県立病院の受診者を対象」する時点で、通院者しか対象とならず、ポピュレーションアプローチになり得ない。
通院者を対象にしている時点で、ハイリスクアプローチとなる。
〇⑷ 多くのK県民が利用する駅構内とバス停に、野菜摂取量増加と減塩の重要性に関するポスターを掲示する。
「多くのK県民が利用する駅構内とバス停」で情報発信をすることで、
他の選択肢よりは多くの人の目につき、ポピュレーションアプローチとして最も適している。
文責:アヒル