38-179 小児肥満症での食事療法は原則として「厳しい制限はしない」ことである。
これは成長・発達の時期である小児にエネルギーや栄養素を厳しく制限すると、
正常な発育, 発達が害される恐れがある。
そのため、
・体重は現状維持、身長の伸びを待ち肥満度を下げる
・不足している栄養素の補填
を優先的に考える必要がある。
⑴ エネルギー量
食事記録より2500kcal〜2700kcal程度摂取していると計算できる。
医師からの指示エネルギーが2000kcalなので
2~3割多いことになる。肥満の解消にはエネルギー制限をした方が良いと感じるが
・不足している栄養素の補填
の観点から、他の選択肢で不足している栄養素があればそちらを優先すべきである。
解答する際はこの時点では保留となるが、後述の理由によりこの選択肢は不適となる。
以下、不適は同様の理由であるため、各選択肢に不適の記述は記載しない。
〇⑵ たんぱく質量
たんぱく質の摂取量は栄養価計算すると60g〜80gであり、
指示エネルギー2000kcalから見ると
たんぱく質エネルギー比はおよそ12%E〜16%E前後となり正常〜やや不足である。
現時点での2500〜2700kcal摂取での60g〜80gで考えると13%未満となり
相対的に摂取量は少ないということになる。
・不足している栄養素の補填 の観点、加えて、他の選択肢に「不足」がないことから
この選択肢が適していることとなる。
⑶ 脂質量
摂取している量を栄養価計算すると80~90g程度摂取しており、
指示エネルギー2000kcalから見ると
脂質エネルギー比はおよそ36%E〜40%E前後となり過剰である。
現時点での2500〜2700kcal摂取での80g〜90gで考えると30%前後となり
いずれにせよ、やや多いことになる。
栄養価計算ができなくとも、
揚げ物(南蛮, フライドポテト)、乳製品(牛乳、アイスクリーム)、ポテトチップスと
これでもかと、脂質が多い食品を摂っているため「過剰かな?」と考えられる。
⑷ カルシウム量
カルシウム摂取量を750mgと設定しているが、牛乳200mLでカルシウム約200mgであり、
1日2回の牛乳(約380mg)+アイスクリーム(80g中110mg)+骨ごと食べる小アジ(50g中390mg)
→880mgと考えるとおそらく充足している。
※と、偉そうに、ここまで述べたが、正直なところ試験中に栄養価計算ができるわけもなく
カルシウムは南蛮漬けの小骨、牛乳、アイスクリームで十分摂っていそう・・・
パッと見、揚げ物や乳製品、ポテチなど脂肪やエネルギー量が多そう。減らす場合はこの二択・・・?と考える程度。
たんぱく質は足りているか足りていないか計算できない。不足している場合は追加する・・・?と考える程度。
となり、正規の方法で解くことは難しい。
そのため次の180を活用する。
179を踏まえた声掛けで「おかわりはやめよう」「間食のお菓子(ポテチ)をやめよう」とあるので
エネルギーを制限するのは大前提で、「他に何か、問題があるんだな。」と裏読みすることができる。
よって、180の選択肢を精査し179と180を合わせて解くことがかろうじて出来る抵抗である。
38-180 179の解説の通り、
・体重は現状維持、身長の伸びを待ち肥満度を下げる
・不足している栄養素の補填
を目指しつつ、摂取量を検討する。
そして、カルシウムは足りていそう。脂肪とエネルギーは多そう。たんぱく質は不明。まではたどり着いているのでそれを踏まえて、選択肢を見ていく。
⑴ 朝食のご飯はパンにし、給食のおかわりはやめましょう。
給食でのご飯のおかわりをやめることでエネルギー摂取量を減らすことができる。
ただし、朝食のご飯をパンに変えることで脂肪摂取量が増加する。
これ以上脂肪を増加させるのは良くないと考えることができ、不適である。
〇⑵ 朝食に大豆製品を追加し、給食のおかわりはやめましょう。
給食でのご飯のおかわりをやめることでエネルギー摂取量を減らすことができる。
また朝食に主菜がないため、「3食+間食でのバランスの良い摂取」を考えると
この選択肢が適していると考えられる。
※他の選択肢を見て、消去法で選ぶ方が良い。
⑶ 朝食に牛乳を追加し、給食のおかわりはやめましょう。
給食でのご飯のおかわりをやめることでエネルギー摂取量を減らすことができる。
ただし、朝食に牛乳を追加で摂取し、たんぱく質・脂肪・カルシウムを同時に増加させることは
既に脂肪過多&カルシウム充足の観点から不適であると考えられる。
「たんぱく質を補充するために・・・」という見方もあるが
その場合は(2)の大豆製品の方がより適しているため、この選択肢は不適となる。
⑷ 間食のお菓子をやめて、果物にしましょう。
間食のお菓子をやめることで脂肪とエネルギー摂取量を減らすことができる。
ただし、既に果物はみかん2個など十分摂取しているため、これ以上果物を追加するのは過剰となり不適である。
結果として、(2)の朝食に大豆製品を増やす(+おかわりをやめる)が消去法で妥当と考えられる。
また、この結果から179は「たんぱく質を増やすべき」という内容が考えられ、
ここでようやく179は(2)が最適と絞ることができる。
38-181 身長が2cm伸び、体重は44kgを維持していることから、
小児肥満の問題で必ず念頭におくべき「体重は現状維持、身長の伸びを待つ」ができていると考えられる。
まずは(4)の正答の解説を見たあとに(1)〜(3)を見てもらいたい。
⑴ 食べすぎが原因です。食事量を減らしましょう。
⑵ 運動不足が原因です。運動量を増やしましょう。
「体重維持&身長が伸びてきている」ため、
食べ過ぎではないし、運動不足でもない。
よって食事量を減らしたり、運動量を増やす必要はない。
また母親の「頑張っていますが、体重は減りません。」に対し、
「食べ過ぎ(or 運動しなさすぎ)。あなた方は頑張っていない」と否定するような発言となるため不適である。
※もし、仮に、国試の選択肢で食べ過ぎ、運動不足を改善しなければいけない場合、「原因を一緒に考えましょう」や
「無理のない範囲で減らすには何ができそうですか?」などの提案になりがち。
その際、設問中に保護者や児童本人の「寒さ、暑さによってうまく運動出来ない」などヒントが書かれているはずである。
⑶ 合併症が心配です。検査を受けてみてください。
前述の通り、肥満が改善されつつあるので合併症の心配は少なく、検査を受ける必要もない。
〇⑷ 肥満は改善されてきています。今の取組を続けましょう。
最も適切な発言である。前述のとおり、「体重維持&身長が伸びてきている」ことから
体重減少はしていなくとも、肥満は改善されている。
そのため、母親の「頑張っていますが、体重は減りません。」に対し
現状の肯定, 不安を解消する, 行動継続の後押し をするために、この選択肢が最適となる。
※小児肥満における「体重は現状維持, 身長の伸びを待つ」は典型的な考え方なので
おさえておく必要があります。健康日本21(第二次)での
「適正体重の子どもの増加」という項目が悪化しており
近年の問題点として今後も類似の問題が出題されると考えられる。
179~180を通しで考える方法は多少、結果論ベースなので本番で実行するのは難しいかもしれない。
ただ、「解ければ良いのだ!」という目線で行くのであれば、これくらい割り切って欲しい。
※180でご飯のおかわりを止めていることから、確実に過剰なエネルギーを是正するという目線で179では(1)を選び、
180では、不足しているかもしれないたんぱく質目線で(2)を選び、確実に1点を狙いに行く作戦も、個人の成績次第ではアリ(責任は負いません)。
文責:アヒル